概要
資産運用大手ブラックロック（BlackRock）は、ロンドン証券取引所（LSE）に初となるビットコインETP（上場投資商品）「iShares Bitcoin ETP（IB1T）」を正式に上場した。この展開は、英国金融行動監視機構（FCA）が小売投資家向けの暗号資産ETN（上場投資証券）へのアクセスを禁止してから4年ぶりにその方針を転換した決定を受けたものである。
背景
英国のFCAは約4年間にわたり、暗号資産を基礎資産とするETNの小売投資家向け販売を禁止していた。これは投資家保護の観点から設けられていた規制である。今回、FCAがこの禁止措置を公式に終了させたことで、ブラックロックをはじめとする資産運用会社が英国の小売投資家向けに規制された暗号資産関連商品を提供する道が開かれた。
テクニカル詳細
ブラックロックが上場した「iShares Bitcoin ETP（IB1T）」は、物理的裏付けのある（physically backed）商品であり、投資家がビットコインを直接保有することなく、規制された市場を通じてビットコインへのエクスポージャーを得ることを可能にする。同社は今年、すでにドイツ、フランス、オランダなど欧州諸国で同様のビットコインETPを展開している。
マーケット動向
ブラックロックのiShares Bitcoin ETPは、取引開始から1時間以内に1,000株以上の取引が記録され、初期段階から強い投資家需要が確認された。ブラックロックの米国における旗艦商品であるiShares Bitcoin Trust（IBIT）は855億ドル（約8.55兆円）以上の資産を集めている。
影響と展望
ブラックロックのEMEA地域におけるグローバル・プロダクト・ソリューション責任者、ジェーン・スローン氏は、「英国の暗号資産投資家層が来年までに約400万人に達すると予想される中、この上場は従来の投資チャネルを通じた、より安全で透明性の高いデジタル資産への参入点を提供する」とその意義を強調した。
ブロックチェーン分析企業Ellipticの政策責任者、マーク・アルリア氏はこの方針転換を評価し、「英国の投資家が規制された取引所を通じて暗号資産にアクセスできるようにすることは、消費者が規制のない海外プラットフォームに流出するのを防ぎ、活動を安全な範囲内に保つことに役立つ」と述べつつも、「英国が世界的な競争力を維持するためには、現在の勢いを維持しなければならない」と指摘した。
ブラックロックに続き、他の資産運用会社もロンドン市場での商品展開を開始または拡大している。21Sharesは、ABTC、CBTC、AETHを含む4つの物理的裏付けのある暗号資産ETPを導入し、手数料を0.10%とする新たな料金体系を設けた。Bitwiseは「Core Bitcoin ETP（BTC1）」をLSEの小売部門に上場し、手数料を0.05%に引き下げた。WisdomTreeも独自の物理的裏付けのあるビットコインおよびイーサリアム商品を発表し、手数料は0.15%から0.35%の範囲で設定されている。
FCAの方針転換を受け、英国は米国との間でステーブルコインやデジタル資産の監督に関する共同フレームワークに焦点を当てた協力関係も深化させている。
まとめ
FCAによる暗号資産ETN禁止措置の撤回を受けて、ブラックロックが英国で初となるビットコインETPをロンドン証券取引所に上場した。これに他の主要資産運用会社も追随しており、英国市場は規制された形での機関及び小売投資家のデジタル資産参入に対する障壁が大幅に低下した新たな段階を迎えている。