概要
2025年10月20日、Amazon Web Services(AWS)の大規模障害により、Coinbase、Robinhoodなどの暗号通貨取引所、Baseなどのイーサリアムレイヤー2ネットワーク、さらにInfuraなどのブロックチェーン基盤サービスが広範なサービス障害を経験した。この障害はAWSのUS-EAST-1リージョンで発生したDynamoDBデータベースサービスのDNS解決問題が原因で、58のAWSサービスに影響が及んだ。
背景
AWSは世界のインターネットインフラの大部分を支えるクラウドサービスプロバイダーとして、数百社の企業にクラウドストレージとコンピューティングパワーを提供している。暗号通貨業界においても、その依存度は無視できないレベルに達している。今回の障害は、Amazonにとって今年2回目となる大規模な障害事例となった。
テクニカル詳細
障害の原因は、US-EAST-1リージョンにおけるDynamoDB APIエンドポイントのDNS解決に関する問題であった。この問題は、IAMアップデートやDynamoDBグローバルテーブルなど、US-EAST-1エンドポイントに依存するグローバルサービスにも影響を及ぼした。Infuraの報告によれば、この障害はPolygon、Optimism、Arbitrum、Linea、Base、Scrollへのユーザー接続に影響を与えた。
マーケット動向
Ethernodesのデータによると、AWSは約2,368のイーサリアム実行層ノードをホストしており、これはネットワーク全体の約37%を占める。障害発生後、Down DetectorではSnapchatやSignalを含む50以上のプラットフォームで障害が報告された。注目すべきは、分散型ストレージプロトコルに関連するトークンが過去24時間で最高のパフォーマンスを示す資産の一つとなった点である。
影響と展望
プライバシー重視のポートフォリオトラッカーRotkiappの創業者Lefteris Karapetsas氏は、「ブロックチェーン全体のビジョンは分散型インフラにあったが、私たちはそれに完全に失敗した」と指摘した。この障害は、分散型を標榜する暗号通貨生態系が中央集権的なクラウドプロバイダーに依存しているという根本的な問題を浮き彫りにした。O.XYZのCEOであるAhmad Shadid氏は、分散型クラウドコンピュートシステムがAWSと競合するためには、同程度のデータセンター数と計算資源が必要だと指摘し、その実現可能性に疑問を投げかけている。
まとめ
AWSの大規模障害は、暗号通貨業界における中央集権的インフラへの依存という根本的な問題を明らかにした。雖然ブロックチェーン技術は分散型を理念としているが、実際のインフラ運用では効率性とコスト面から中央集権的なクラウドサービスへの依存が進んでいる。この事件を契機に、FilecoinやArweaveといった真に分散型の代替ソリューションへの関心が高まっているものの、AWSレベルのスケールと信頼性を達成するには依然として課題が多い。