概要
ウォール街の重鎮として知られる株式戦略アナリスト、トーマス・「トム」・リー氏が、イーサリアム(ETH)を主要準備資産とする財務戦略企業、BitMine Immersion Technologies(BMNR)の取締役会長に就任した。同氏のキャリアは伝統的金融に根ざしているが、暗号資産への積極的な関与は、金融業界におけるデジタル資産受容の拡大を象徴する動きである。BitMineはビットコイン・マイニングからETH中心の財務戦略へと転換し、大規模な私募を実施している。
背景
トム・リー氏は1990年代にキダー・ピーボディで研究アソシエートとしてキャリアを開始し、オッペンハイマー、ソロモン・スミス・バーニーを経て、ウォール街の大手投資銀行JPモルガンに15年間在籍、トップアナリストとして評価された。2014年にJPモルガンを離れ、Fundstrat Global Advisorsを共同設立。同社では、暗号通貨に調査対象を広げた初期の著名戦略家の一人となった。この経験が、BitMineでの新たな役割を支えている。
テクニカル詳細
BitMineは、ETHを主要準備資産としてステーキングおよび保有する財務戦略へと事業を転換した。同社は「1株当たりETH保有量」を重要な業績指標として採用している。リー氏は、2025年12月3日に実施されたイーサリアム・ブロックチェーンの「Fusaka」アップグレード後にETHの購入を加速させたと述べている。このアップグレードは、スループットの向上、バリデータの効率維持、blob手数料に下限を設けることでブロックチェーンの価値捕捉を強化することが期待されている。
マーケット動向
BitMineは現在、約390万ETHトークン(イーサリアム総供給量の3%超)を保有する最大の企業保有者である。先週だけで138,452トークンを取得し、これは少なくとも1カ月間で最大の週間取得量だった。同社は現金保有高を10億ドルに増やし、現在、暗号資産と現金を合わせて総額132億ドルの資産を保有している。イーサリアム(ETH)の価格は年初来約10%下落している(記事執筆時点の相場情報による)。
影響と展望
リー氏は、安定コイン市場の成長(米財務長官の発言として、現在の2500億ドルから2兆ドルに達する可能性を引用)と、その取引の大部分がイーサリアム上で行われる点から、ETHがこの成長の恩恵を受けると見ている。また、今月予想される米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げや量的引き締め(QT)の終了などのマクロ要因が、2026年初頭のより強力なETH市場の触媒となると指摘。最近の暗号市場の弱さは、10月10日のフラッシュ・クラッシュ後のマーケットメイカー業務縮小に起因する流動性の急落が原因である可能性があると述べた。リー氏はETHが「同じスーパーサイクル」に入りつつあるとし、ビットコイン(BTC)が過去8年半で50%以上の下落を6回、75%以上の下落を3回経験したような変動を経ながらも上昇する可能性を示唆したが、具体的な価格目標やタイムラインは示さなかった。
まとめ
伝統的金融界の重鎮であるトム・リー氏が、イーサリアム財務戦略企業BitMineの会長に就任したことは、金融業界におけるデジタル資産の本格的な受容と、経験豊富な金融プロフェッショナルが暗号資産分野で運営責任を担う意思が高まっていることを示す象徴的な事例である。同氏の役割は、機関投資家の世界と暗号資産エコシステムを橋渡しするものであり、BitMineの大規模なETH保有戦略を通じて、その融合を具体化している。