概要
ステーブルコインUSDTを発行する暗号資産企業テザーは、イタリアの名門プロサッカークラブ「ユヴェントス・フットボール・クラブ」の完全買収に向け、10億ユーロ(約11億ドル)の拘束力ある現金での入札を行ったと発表した。しかし、この提案はクラブの筆頭株主である持ち株会社Exorから既に拒否されたと報じられている。
背景
テザーは、自社名を冠したステーブルコイン「Tether (USDT)」を発行する世界最大手の企業である。同社は近年、ステーブルコイン事業以外にも事業を拡大し、人工知能(AI)、ロボティクス、ヘルスケアプラットフォームなどへの投資を行ってきた。スポーツ分野では、今年2月にユヴェントスの株式を取得し始め、4月にはその保有比率を10%超にまで増加させている。さらに10月には、同社の副投資責任者であるザカリー・ライオンズ氏とフランチェスコ・ガリーノ氏を、ユヴェントスの取締役会への候補者として指名した。ガリーノ氏の取締役就任は先月、株主総会で承認されている。
マーケット動向
ユヴェントスは公開企業であり、金曜日終値時点での時価総額は9億4449万ユーロ(約11億ドル)であった。同日の株価は2.23ユーロ(2.62ドル)で、2.3%上昇して取引を終えている。テザーは、Exorが保有する65.4%の支配株を取得した後、残りの株式に対しても同じ価格で公開買付けを行うと提案している。
影響と展望
テザーのパオロ・アルドイーノCEOは声明で、「テザーは財務的に健全な立場にあり、安定した資本と長期的な視野でユヴェントスを支援する意思がある」と述べ、取引が成立した場合、クラブの支援と発展のために10億ユーロ(約11億ドル)を投資する用意があると約束した。また、個人的な思いとして「ユヴェントスは常に私の人生の一部だった」と付け加えている。一方、AFP通信の報道によれば、Exor側はこの入札を拒否しており、関係者は「ユヴェントスは売却対象ではない」とコメントしたとされる。Exorとテザーは、Cointelegraphのコメント要請に対して直ちには応じていない。この動きは、暗号資産企業が従来の金融・ビジネス領域を超え、世界的なスポーツ資産への参入を図る顕著な事例として注目を集めている。
まとめ
ステーブルコイン大手のテザーが、イタリアの名門サッカークラブ・ユヴェントスの完全買収に向けて大規模な入札を行った。同社は既に株式の10%以上を保有し、取締役会への人材派遣にも成功するなど影響力を強めてきたが、筆頭株主からの拒否報道により買収実現への道筋は不透明となっている。暗号資産企業の伝統的スポーツ界への進出という新たな動向を示す事例である。