概要
グローバル法律事務所ホワイト&ケースのパートナー、ローラ・キャサリン・マン氏は、2025年を暗号通貨関連企業のIPO(新規株式公開)の「テストケースの年」と評価する。しかし、真の試練は2026年に訪れ、市場がデジタル資産関連上場企業を「持続可能な資産クラス」と見なすか、それとも単なる強気相場限定の取引対象と判断するかが明らかになると述べている。2026年の上場候補企業は金融インフラストラクチャー関連に偏るとの見方を示した。
背景
2025年は、ステーブルコイン発行体のCircle(CRCL)が6月に、CoinDeskの親会社であるBullish(BLSH)が8月に、暗号資産取引所のGemini(GEMI)が9月に上場するなど、暗号通貨関連企業のIPOが活発な年となった。2021年のブームと崩壊からグローバルな暗号資産活動は大きく回復している。マン氏によれば、2026年に向けた未解決の課題は、暗号資産関連発行体が「その勢いを維持」し、暗号資産ネイティブな熱狂だけでなく、公開市場の基準を満たすことができるかどうかである。
マーケット動向
マン氏は、公開市場の投資家が2026年に持ち越す背景として、ビットコイン(BTC)の価格変動を指摘している。ビットコインは2024年に2倍以上に上昇し、2025年には史上最高値を更新した後、急落した。このようなボラティリティは、投資家が来年のIPO候補を評価する際に考慮する要素であり、市場センチメントだけでなく、収益の持続性、顧客活動、セクター全体の評価倍率にも影響を与えるとしている。一方で、S&Pダウジョーンズ・インデックスが2025年10月にデジタル資産と暗号資産関連上場企業を組み合わせた商品の提供を開始すると発表するなど、主流の市場インフラがこのセクターをパッケージ化し始めており、機関化のさらなる兆候が見られる。
影響と展望
マン氏は、2026年に向けた最大の変化の一つとして、米国の規制環境の変化を挙げている。米国は不利な環境から「デジタル資産にとってはるかに建設的な環境」に移行しつつあり、GENIUS法がその方向性の一例だと指摘する。この変化により「米国市場はより投資しやすいものになった」と述べ、機関投資家の採用の兆候も増えているとしている。
2026年のIPO候補は、以下の3つのカテゴリーから出てくると予想されている。
1. 規制済み取引所とブローカー:既に「銀行のようなコンプライアンス体制」の下で運営されている取引所やブローカーが最も上場の可能性が高く、公開市場投資家や規制当局にとって既知の存在として提示できるため、IPOは「次の論理的なステップ」となる。暗号資産取引所Krakenは既に上場申請を行っており、早ければ来年第一四半期にも上場する可能性がある。
2. インフラストラクチャーとカストディ事業:収益が定期的またはサブスクリプションベースであり、日々のトークン価格と強く連動していないインフラやカストディ事業に投資家の選好が傾くと予想。公開市場で共感を得る訴求点は安定性、つまり暗号資産のボラティリティが急騰した場合でも業績を維持できるビジネスモデルである。
3. ステーブルコイン決済およびトレジャリー型プラットフォーム:大西洋の両側で法的枠組みが強化されているため、ステーブルコイン関連発行体やトレジャリープラットフォームの上場可能性が高まっている。GENIUS法が米国で、MiCAが欧州で明確な道筋を提供しており、これにより「法定通貨に裏付けられたステーブルコイン発行体や、規制された金融機関に似た決済プラットフォームのためのより堅牢な法的枠組み」が生まれ、公開市場投資家が既に引き受け方を知っている構造になるとの見解を示す。
まとめ
2026年のIPO市場には、前向きな規制環境や機関化といった追い風がある一方で、企業評価に対する厳格な目、地域を超えたマクロ経済の不確実性、暗号資産価格の動向(例:2025年10月以降の急落)が上場の機会を狭め、実際に市場に参入できる企業数を減らす可能性もある。マン氏は、2025年が暗号資産関連企業が再び上場できるかを試した年であるならば、2026年はそれが持続可能な形で行えるかを試す年になると結論づけている。