日銀、30年ぶりの高水準への利上げを目前に、ビットコインに新たな脅威となる可能性

日本銀行(日銀)が12月19日に政策金利を0.50%から0.75%へ引き上げ、約30年ぶりの高水準にするとの見通しが報じられた。この利上げにより、長年にわたり低金利の日本円を借りて高リスク資産に投資する「円キャリートレード」の魅力が減退し、資金の逆流を招く可能性がある。過去の日銀利上げ(2024年7月)では、円高とリスク回避ムードの高まりからビットコイン(BTC)が約65,000ドルから50,000ドルへ下落した経緯がある。一方で、今回は投機筋が円の買いポジションを既に保有していることや、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに転じていることから、直ちに強いリスク回避が起こる可能性は低いとの見方もある。しかし、日本の債務対GDP比が240%に達する財政状況は、来年の市場変動の潜在的要因として注視が必要と指摘されている。

概要

日本銀行(日銀)が2025年12月19日に政策金利を0.50%から0.75%へ25ベーシスポイント引き上げ、約30年ぶりの高水準にするとの見通しが日本経済新聞により報じられた。この動きは、低金利の円を調達して高収益資産に投資する「円キャリートレード」の縮小を促し、世界的な流動性を引き締める可能性があり、流動性に敏感なビットコイン(BTC)や暗号資産市場全体にとって新たな下落リスク要因となりうる。

背景

長年にわたり、日本の超低金利(時にはマイナス金利)政策は、ヘッジファンドやトレーディングデスクが円を安く借り、米国債やハイテク株などの高ベータ資産に投資する「キャリートレード」を可能にしてきた。この戦略は、日本と他の主要国との金利差に依存している。日銀による利上げは、この金利差を縮小させ、キャリートレードの収益性を損なう可能性がある。

マーケット動向

記事執筆時点で、ビットコイン(BTC)は約90,105ドルで取引されている。円は1ドル=156円近辺で推移しており、11月末のピーク(157円超)よりやや強含んでいる。直近の重要な日銀利上げは2024年7月31日に行われ、政策金利を0.5%に引き上げた。この決定後、円高が進み、2024年8月初旬にはリスク回避ムードが広がり、ビットコインは約65,000ドルから50,000ドルへ下落した。

影響と展望

今回の利上げがビットコインを含むリスク資産に与える影響については、見方が分かれている。一方では、過去の例のように円高と流動性縮小を通じて下落圧力となる可能性が指摘されている。他方で、以下の理由から直ちに強いリスク回避(リスクオフ)が起こる可能性は低いとの見方もある。

1. 商品先物取引委員会(CFTC)のデータによれば、投機筋は既に円のネットロング(買い)ポジションを保有しており、利上げに対する過剰な反応は起こりにくい状況にある(2024年半ばはネットショートだった)。

2. 日本の債券利回りは今年を通じて上昇しており、短期・長期ともに数十年ぶりの高水準に達している。今回の政策金利引き上げは、市場金利に公式金利が追いつく形となっている。

3. 米FRBは今週、25ベーシスポイントの利下げを実施し、3年ぶりの低水準にするとともに流動性供給措置も講じている。これによりドル指数は7週間ぶりの安値をつけており、大規模な「円キャリートレードの巻き戻し」や年末のリスク回避が起こる確率は低いと示唆されている。

ただし、高橋沙奈え首相の下での財政拡大と減税、3%近辺で推移するインフレ、そして債務対GDP比240%という日本の財政状況は、来年の市場ボラティリティの潜在的な源泉として注意深く監視する必要があると専門家は指摘している。

まとめ

日銀が約30年ぶりの高水準となる利上げを実施する見通しは、円キャリートレードの縮小を通じて世界的な流動性を引き締め、ビットコイン市場に下落圧力となる可能性がある。過去の利上げ時にはビットコイン価格が大きく下落した経緯がある。しかし今回は、投機筋のポジションや米国の金融緩和動向など、市場環境が異なるため、直ちに同様の反応が起こるかは不透明である。日本の巨額の財政赤字とインフレ持続は、中長期的な市場不安材料として注視が必要である。

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