概要
2024年から2025年にかけての暗号資産市場のパフォーマンス分析により、ビットコインやイーサリアムなどの大型銘柄と、それ以外の小型アルトコインの間で極端な格差が生じていることが明らかになった。複数のアルトコイン指数が歴史的な低水準を記録する一方、米国株式指数は堅調な上昇を続けており、アルトコインへの分散投資のメリットが疑問視されている。特に、小型アルトコイン指数は2020年以来の安値を更新し、「アルトシーズン」と呼ばれるアルトコイン一斉上昇相場の期待は事実上終わったと見なされている。
背景
従来の暗号資産市場サイクルでは、ビットコインの上昇に遅れて他のアルトコイン(アルトコイン)が大きく値上がりする「アルトシーズン」が発生するとの見方があった。投資家はリスクを取って小型アルトコインに分散投資することで、ビットコイン単独では得られない高いリターンを期待してきた。しかし、2024年以降の市場環境は、ビットコインとイーサリアムの現物ETF承認など制度的進展が大型銘柄に集中し、規制の明確さや流動性、カストディ体制が整った資産への資金流入が顕著となった。
テクニカル詳細
分析では主に3つのアルトコイン指数が参照されている。1つ目は「CoinDesk 80 Index」で、2025年1月に導入され、CoinDesk 20(上位20銘柄)に含まれない次の80の暗号資産を追跡する。2つ目は「MarketVector Digital Assets 100 Small-Cap Index」で、100資産バスケットの中で最も時価総額の小さい50トークンを対象とする「市場の低品質部分」の指標だ。3つ目はKaikoの小型時価総額指数で、取引可能なベンチマークではなく研究用の定量分析視点を提供する。
マーケット動向
パフォーマンスの差は明白である。2025年11月時点で、MarketVector小型時価総額指数は2020年11月以来の低水準に沈み、過去5年間のリターンは約-8%だった。一方、同大型株版指数は同期間で約+380%上昇した。CoinDesk 80指数は2025年第1四半期だけで-46.4%下落し、7月中旬時点で年初来約-38%のマイナスとなっている。対照的に、S&P500は2024年に+25%、2025年に+17.5%上昇し、2年間の複合リターンは約47%に達した。ナスダック100も同様の堅調な上昇を示した。
重要なのは相関関係だ。CoinDesk 5(ビットコイン、イーサリアム等大型5銘柄)とCoinDesk 80の相関係数は0.9と極めて高い。つまり、両者は同じ方向に動くが、一方は年初来+12〜13%の利益を出し、他方は約-38%の損失を被ったことになる。アルトコイン取引量のビットコインに対する優位性は2021年時の水準に戻ったが、その取引量の64%は上位10アルトコインに集中している。
影響と展望
このデータは、投資家が小型アルトコインに分散してもリスク調整後のメリット(分散効果)がほとんどなく、むしろ大幅なパフォーマンス悪化と大きなドローダウン(下落幅)を被る結果となったことを示している。市場の流動性は消えたわけではなく、品質の高い資産(ビットコイン、イーサリアム、ソラナ、XRPなど限られた大型アルトコイン)に集中している。制度的資金流動は、規制の明確さ、流動性の高いデリバティブ市場、カストディインフラが整った資産に向かっている。
次の市場サイクルにおいて、流動性が広範なアルトコイン市場に戻るかどうかは不透明だ。2024年から2025年の期間は、リスク選好のマクロ環境下でも、広範なアルトコインが分散投資価値やアウトパフォーマンスを提供できるかどうかを試す期間となったが、結果は否定的だった。資本の大半は、ほとんどのアルトコインを戦術的な取引対象と見なし、構造的な配分先とは見なしていない。
まとめ
2024年から2025年のデータは、暗号資産市場における「アルトシーズン」の終焉を強く示唆している。小型アルトコイン指数は数年来の低水準に沈み、大型銘柄や伝統的株式指数に対して極端に悪いパフォーマンスを記録した。高い相関関係のもとでリターンに巨大な格差が生じたことは、小型アルトコインへの分散投資がリスクに対して適切な報酬をもたらさなかったことを意味する。市場の流動性と制度的資金は、限られた大型で「制度的グレード」の暗号資産に集中する傾向が強まっており、この構造は少なくとも近い将来、継続する可能性が高い。