HashKey、香港初の暗号資産ネイティブ企業としてIPOを計画

香港を拠点とする暗号資産プラットフォームHashKey Groupが、香港証券取引所への上場を申請し、同市場で初の完全な暗号資産ネイティブ企業としてのIPOを目指している。同社は2億4057万株を発行し、最大発行価格は1株あたり6.95香港ドルで、完全に消化された場合の調達額は最大約16.7億香港ドル(約2億1500万米ドル)に達する可能性がある。取引開始は2025年12月17日を予定。HashKeyは単なる取引所ではなく、取引、カストディ、機関向けステーキング、資産管理、トークン化を組み合わせた包括的な規制対応プラットフォームを構築している。2024年の総収益は7億2100万香港ドルと、2022年から4.5倍以上に成長したが、技術、コンプライアンス、市場拡大への積極的な投資により、同年の純損失は11億9000万香港ドルに拡大している。このIPOは、香港の仮想資産規制制度の実力を公的株式市場で試す重要なケーススタディとなるとともに、コンプライアンスを重視した暗号資産インフラに対する投資家の評価を測る試金石として注目されている。

概要

香港の仮想資産規制制度下でライセンスを取得した暗号資産プラットフォームHashKey Groupが、香港証券取引所への新規上場(IPO)を申請した。2億4057万株を発行し、最大発行価格は1株あたり6.95香港ドルで、完全消化時には最大約16.7億香港ドル(約2億1500万米ドル)の資金調達を見込む。上場が実現すれば、香港市場初の完全な暗号資産ネイティブ上場企業となる。取引開始は2025年12月17日を予定している。

背景

香港は過去数年間の規制の不確実性を経て、デジタル資産ハブとしての地位を再構築する取り組みを進めてきた。過去2年間で、小売・機関投資家向け暗号資産プラットフォームの専用ライセンス制度を導入し、厳格に管理されたステーキングサービスを許可するなど、規制環境を整備してきた。HashKeyのIPO申請は、このような規制枠組みの下で構築された事業が、公的株式市場の投資家からどのように評価されるかを試す初めての大規模な事例となる。

テクニカル詳細

HashKeyの事業の中核は、香港証券先物取引委員会(SFC)から第1類(証券取引)および第7類(自動化取引サービス)のライセンスを取得した「HashKey Exchange」である。スポット取引、相対取引、香港ドル・米ドルによる法定通貨の入出金をサポートしている。さらに、同グループは「HashKey Cloud」を通じて機関向けステーキング・ノードサービスを提供し、香港の現物イーサリアムETFのステーキング支援承認も得ている。資産管理部門では暗号資産ファンドなどを運営し、トークン化プラットフォーム「HashKey Chain」では現実資産(RWA)やステーブルコインに焦点を当てたネットワークを構築している。

マーケット動向

HashKeyの財務状況は急成長段階の企業に典型的なパターンを示している。総収益は2022年の約1億2900万香港ドルから2024年には7億2100万香港ドルへと4.5倍以上に増加した。一方で、技術、人件費、コンプライアンス、マーケティングへの積極的な投資により、純損失は同期間に5億8520万香港ドルから11億9000万香港ドルへとほぼ倍増した。取引高は2022年の42億香港ドルから2024年には6兆3840億香港ドルに急拡大したが、低い手数料戦略と複数法域でのライセンス事業運営コストが収益を圧迫している。2025年上半期の純損失は5億670万香港ドルで、前年同期の7億7260万香港ドルの損失からは改善が見られる。また、2025年第3四半期末時点で約290億香港ドルのステーキング資産、約78億香港ドルの運用資産を管理し、HashKey Chain上には約17億香港ドル相当のオンチェーンRWAがあると報告されている。

影響と展望

このIPOの結果は、香港の仮想資産規制アプローチの実効性を測る指標として、また「コンプライアンス優先」の暗号資産インフラに対する市場の評価を試すリアルタイムのテストとして広く注目されている。上場後の株価動向は、規制の制約の中で上場暗号資産取引所が利益を上げて成功する余地が十分にあるかどうかの初期指標と見なされる可能性がある。HashKeyが成功すれば、香港における他の取引所やトークン化プロジェクトの上場への道筋を明らかにする一方、苦戦すれば、香港の仮想資産実験の実践的な限界が浮き彫りになるかもしれない。

まとめ

HashKey Groupは、香港の新たな仮想資産規制制度下で包括的なライセンスを取得したプラットフォームとして、香港市場初の暗号資産ネイティブIPOを目指している。取引所に留まらない、カストディ、ステーキング、資産管理、トークン化を組み合わせた「フルスタック」事業モデルと、国際展開を視野に入れた資金使途が特徴である。急成長する収益と拡大する損失というジレンマを抱えつつも、規制対応型デジタル資産市場への長期的な賭けとして位置付けられるこの上場は、香港のデジタル資産ハブ構想の重要な試金石となる。

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