概要
英国最高裁判所は、暗号資産Bitcoin Satoshi Vision(BSV)の投資家グループが、Binance(バイナンス)をはじめとする複数の暗号資産取引所を相手取り提起した約130億ドル規模の集団訴訟について、原告側の上告受理を拒否した。2025年12月8日に公表された簡潔な決定文で、最高裁は原告であるBSV Claims Limitedの「申請は議論の余地のある法律上の論点、または一般的な公共の重要性を持つ法律上の論点を提起していない」と述べた。これにより、取引所がトークンを上場廃止した後の「将来の投機的利益の損失」に対する賠償責任を認めなかった下級審の判断が確定し、訴訟の範囲が大幅に縮小されることになった。
背景
この訴訟は、2019年にBinance、Kraken、Shapeshift、Bittyliciousなどの複数の主要暗号資産取引所が相次いでBSVの上場を廃止したことを受けて提起された。BSVは、ビットコインのオリジナルビジョンを主張するCraig Wright(クレイグ・ライト)氏らを中心に支持されるプロジェクトだが、その主張を巡る論争が絶えず、当時のデリスト決定はこうした論争を背景に行われた。原告のBSV Claims Limitedは、これらの取引所がBSVの上場廃止を協調して行い、英国の競争法に違反したと主張。その行為がBSVトークンの価格崩壊を引き起こし、投資家に巨額の損害を与えたとして、約130億ドルの損害賠償を求める集団訴訟を英国競争控訴裁判所(CAT)に起こした。
テクニカル詳細
詳細は不明。
マーケット動向
元の記事では、本訴訟に関連する具体的なBSVの価格データや取引量は言及されていない。ただし、原告側は取引所による協調的なデリストがBSVの「価格崩壊」を招いたと主張しており、これが巨額の損害賠償請求の根拠とされていた。裁判所は、デリスト後に投資家が被ったと主張される損失は、将来の採用状況や市場センチメントに依存する「投機的な『見込み成長の損失』」であると判断し、賠償対象として認めなかった。
影響と展望
ドバイを拠点とする暗号資産専門弁護士のIrina Heaver氏は、この判決について「取引所が市場の信頼を失った資産に対して流動性や価格形成を維持する義務はないことを確認するものだ。上場廃止は市場乱用ではない」とコメントしている。同氏は、この結果が「次の『本物のサトシと本物のビットコイン』を主張する者たちに対して、裁判で運を試そうとする際の明確な信号となる」と指摘。「繰り返される訴訟は、市場の受容と信頼に取って代わることはできない。市場がすでに評決を下した争いのあるプロジェクトの評判低下を逆転させたり、復活させたりするために裁判所は道具ではない」と述べ、司法判断よりも市場の評価が最終的に重要であることを強調した。最高裁の決定は、取引所の上場判断に対する責任の範囲を巡る業界の懸念の中で注目されていた論点に一石を投じ、取引所側にとって大きな法的勝利となった。また、「失われた機会」理論に基づく投機的な将来利益の賠償請求を司法が支持しないという先例を確立した。
まとめ
英国最高裁判所は、BSV投資家グループによる130億ドル規模の集団訴訟の上告を受理せず、下級審の判断を支持した。これにより、暗号資産取引所がトークンを上場廃止した後の「将来の投機的利益の損失」に対する賠償責任を認めないという司法判断が確定した。判決は、取引所の上場/廃止判断に対する責任の限界を示し、市場の信頼と受容が訴訟に優先するという原則を明確に打ち出した。業界関係者からは、取引所が自らのトレーダーとビジネスを保護するために行動する権利を確認する重要な判決として評価する声が上がっている。