概要
米国暗号通貨メディアDecryptは、ドナルド・トランプ米大統領を2025年の「今年の人物」に選出した。トランプ政権下で、連邦政府は暗号資産に対する規制障壁を取り払い、業界の正当性を連邦法に定着させることに成功した。しかし、大統領一家の暗号関連事業からの巨額の利益と、司法省によるプライバシーツール開発者への厳罰化は、利益相反とビットコインの本来の使命である市民的自由の保証という観点から、深刻な懸念を引き起こしている。
背景
一年前まで、米国の主要な暗号通貨企業の幹部がホワイトハウスを訪問することはなく、財務長官と交流したり、司法省高官を招いたり、主要な連邦法を成立させたりすることもなかった。トランプ政権の積極的な暗号推進政策は、この状況を一変させた。政権は業界の合法性確立に主導的な役割を果たし、暗号資産の価格急騰をもたらす環境を整えた。
テクニカル詳細
記事は、ビットコインとイーサリアム上で動作する二つの暗号通貨プライバシーツールに言及している。これらのサービスは、ユーザーが第三者を介さずに取引のプライバシーを保護することを可能にした。ブロックチェーンはすべての取引履歴を公開するため、取引を秘匿化するこうしたツールは、取引詳細を非公開にしたいユーザーに広く利用されていた。トランプ政権下の司法省は、これらのサービスが犯罪活動を助長し、無許可の非合法送金事業を構成すると法廷で主張した。
マーケット動向
記事は、暗号資産業界が総額3.3兆ドルに成長したことに言及している。また、トランプ政権の政策は、連邦準備制度によるビットコイン保有の検討、SECによる暗号規制監督の終了、401(k)退職金制度へのデジタル資産組み入れなど、市場に直接影響を与える一連の発表を後押しした。
影響と展望
トランプ政権の政策は、規制環境を整え業界の成長を促したと評価する一方で、二つの大きな懸念を生んでいる。第一に、大統領一家が暗号プロジェクトから数十億ドルの利益を得ているという前例のない利益相反の疑いである。ホワイトハウス報道官は、利益相反は存在せず、政権の政策は全てのアメリカ人のための革新と経済的機会を推進するものだと否定している。第二に、司法省によるプライバシーツール開発者への厳しい取り締まりが、ビットコインの核心的価値である「検閲耐性」と「市民的自由の保証」という理念を侵食しているという点だ。人権財団(HRF)のアレックス・グラッドシュタイン氏は、政権の政策はビットコインの本来の使命とは無関係であり、誰でも好きなように詐欺ができる規制環境を作ろうとしていると批判する。Samourai Wallet開発者の有罪判決は、米国内でのブロックチェーンプライバシーツール開発に萎縮効果をもたらしている。
まとめ
トランプ大統領は、過去1年間で暗号通貨業界の創設者以来の最大の影響力を行使した人物としてDecrypt誌に選出された。その政策は業界の急速な成長と政治的正当性の確立に寄与したが、同時に大統領一家の巨額の利益と、プライバシーと市民的自由を重視する古参のビットコイン支持者たちが掲げる理念との間に、深い溝と緊張関係を生み出している。暗号通貨はもはや単なる政策課題ではなく、トランプ家の富の礎となり、その政治的影響力の中心に位置づけられる一方で、その技術が本来目指した「政府からの自由」という根源的な価値観との整合性が問われる時代に入った。