概要
OpenAIは総額3000億ドルに上る大規模なAIインフラ拡大計画を推進しており、AMDやブロードコムとの間でチップ供給契約を締結した。これらの契約には業績連動型の株式ワラントが含まれるなど、サプライヤーと顧客の関係が資本市場で複雑に連動する新たなフィードバックループが形成されている。
背景
AI産業の急成長に伴い、大規模なコンピューティング能力と電力需要が急速に拡大している。ゴールドマン・サックスの予測では、世界のデータセンター電力需要は2030年までに2023年比で約165%増加すると見込まれている。米国のデータセンターは2030年までに国内電力消費の14%以上を占める可能性があり、電力供給とコスト管理が重要な課題となっている。
企業動向
OpenAIはAMDから6ギガワットのInstinct GPUを、ブロードコムから10ギガワットのカスタムシリコンとラックシステムを2026年から2029年にかけて供給を受ける契約を締結。AMDは業績達成に連動して最大1億6000万株の株式ワラントをOpenAIに付与。また、Oracleとソフトバンクとの「Stargate」構想では、5か所の新たな米国内サイトで3000億ドル規模の投資が計画されている。
市場分析
バンク・オブ・アメリカの10月調査では、ファンドマネージャーの54%がAIをバブルと認識し、現金残高は3.8%近くに達している。マグニフィセント・セブンは2025年半ば時点でS&P500時価総額の約3分の1を占めており、AI関連ニュースや設備投資計画の変更がパッシブポートフォリオに与える影響が大きくなっている。
業界への影響
NVIDIAはコアウィーブに約7%出資しているが、コアウィーブはOpenAIとの契約を65億ドル拡大し、2025年の契約総額は約224億ドルに達している。このように、チップベンダーの株式、インフラレンタル事業者の収入、OpenAIのコンピュート消費が同一のチェーンで結びつく構造が形成されている。
投資家の視点
今後の重要な監視ポイントは、利用率、エネルギーコスト、コスト曲線の3つ。2026年後半から始まり2029年まで続くマルチイヤーランプ期間中、ベンダーとオペレーターの財務成果は、監査済みマージンと契約価格における利益拡大の速度に依存する。発表されたギガワット規模の容量が、実際のワークロード成長、地域の電力供給能力、2028年までのコスト推移とどのように整合するかが、ポートフォリオと財務計画の重要な課題となる。
まとめ
OpenAIを中心とした大規模AIインフラ投資は、資本市場に新たな連鎖構造を生み出している。これらの取引に組み込まれた資金循環が、持続可能なコンピュート経済への架け橋として機能するか、あるいはベンダー、インフラプロバイダー、研究所にわたる相関リスクの源となるかが、今後の注目点である。