概要
テキサス州の小規模な州認可コミュニティ銀行、Monet Bankが、暗号資産(デジタル資産)に特化した「インフラストラクチャーバンク」を標榜し、暗号資産関連融資の分野に参入した。同銀行は資産規模60億ドル未満、資本金10億ドル強で、トランプ前大統領の主要支援者である億万長者アンディ・ビールが所有している。この動きは、連邦規制当局が暗号資産業界への銀行サービスのアクセスを促進する方針転換を進める中での出来事である。
背景
Monet Bankは、1988年にBeal Savings Bankとして創業し、今年初めにXD Bankへ、さらにその2か月後に現在のMonet Bankへと名称を変更した。連邦預金保険公社(FDIC)の規制を受ける州認可機関であり、6つの支店を有している。連邦銀行規制当局は、トランプ政権発足以降、従来の暗号資産取扱いに関する注意喚起の指針を撤回し、暗号資産業界が銀行サービスをより利用しやすくすることを目的とした新たな指針を公表するなど、暗号資産へのアプローチを広範に変更している。
企業動向
Monet Bankは、自社ウェブサイトにおいて「主要なデジタル資産金融機関となり、デジタル経済のための革新的で前向きなソリューションを提供することに焦点を当てている」と表明している。同銀行の所有者であるアンディ・ビール氏は、Beal Financial Corp.の創業者であり、高額賭け金のポーカープレイヤーとして知られ、自身の政治活動委員会を通じてトランプ前大統領の2016年大統領選キャンペーンを主要支援した人物である。
市場分析
暗号資産業界にサービスを提供することを目指す銀行の数は緩やかに増加している。2025年10月には、米国通貨監督庁(OCC)が、Founders Fundのピーター・ティール氏(CoinDesk親会社Bullishにも出資)が支援する技術特化型の新規企業、Erebor Bankに対して条件付き認可を付与した。また、2025年12月初旬には、元Signature Bankの幹部らが、ワイオミング州特別目的預金機関として認可されたナローバンク「N3XT」を立ち上げており、プライベートブロックチェーンを通じた即時決済を提供すると表明している。
業界への影響
Monet Bankの参入は、連邦規制環境の変化を反映した、より広範な金融セクターの動向の一部である。FDICのトラビス・ヒル代行委員長は、今週初めの議会公聴会において、安定コインに焦点を当てたGENIUS法に関連して、暗号資産業界向けの規則を提案する見込みであると述べている。これらの動きは、伝統的な銀行セクターと暗号資産エコシステムとの間の橋渡し役を目指す金融機関が増えつつあることを示唆している。
投資家の視点
規制当局の姿勢変化は、暗号資産関連事業を行う企業や、同業界にサービスを提供する金融機関にとって、従来よりも銀行システムへのアクセスが容易になる可能性を示している。一方で、この分野は依然として規制の明確化が進行中であり、今後の規制方針の変更が事業環境に影響を与えるリスクも存在する。Monet Bankのような小規模銀行の参入は、この新興市場における競争の深化とサービスの多様化をもたらす機会となり得る。
まとめ
テキサス州の小規模銀行Monet Bankが、暗号資産特化銀行としての事業を開始した。これは、連邦規制当局が暗号資産業界への対応をより受容的な方向に転換し、銀行サービスのアクセス改善を図る中で発生した動向の一例である。同業界向けサービスを提供する銀行は増加傾向にあり、金融セクターにおけるデジタル資産への関与が深まっている状況を示している。