概要
米国証券取引委員会(SEC)は、ビットコインマイニング企業「VBit」とその創業者Danh Vo氏を相手取った訴訟の中で、第三者によるビットコインマイナー向けホスティングサービスが「証券法」の対象となる可能性があるとの見解を示しました。SECは、VBitが投資家から約4800万ドルを詐欺的に流用したと訴えています。一方、業界関係者は、正当なホスティングサービスは証券には該当せず、業界全体への影響は限定的との見方を示しています。
背景
SECは現地時間12月18日(水)、デラウェア州連邦裁判所にVBitとその創業者を提訴しました。訴状によると、VBitは2018年から2022年にかけて、実際に所有・運用していたマイニングリグ(採掘機)の数よりも多くのホスティング契約を投資家に販売し、資金を流用したとされています。この訴訟は、バイデン政権下でSECが多くの暗号資産関連事業を証券法の対象として取り締まってきた方針の名残と見られています。
テクニカル詳細
SECがVBitのホスティング契約を「投資契約」(証券)と判断した根拠は、証券かどうかを判断する基準「ハウイーテスト」に照らしたものです。SECは、VBitの契約において、投資家が受動的な収入を期待し、利益を得るためにVBitの努力(リグの運用、マイニングプールへの参加など)に完全に依存していた点を指摘。投資家自身がリグを所有、管理、または代理行使できなかったこと、さらに各投資家の収益の見込みが、VBitが管理するマイニングプール全体のパフォーマンスや、プールに参加する投資家の数に直接結びついていた点を「証券性」の理由として挙げています。
マーケット動向
本件は、詐欺事件としての側面が強く、ビットコイン(BTC)の価格やハッシュレートなどの市場データに直接言及した内容ではありません。しかし、SECの規制見解が業界のビジネスモデルに与える影響についての議論を引き起こす可能性があります。
影響と展望
業界関係者であるBlockware Intelligenceの責任者、Mitchell Askew氏は、正当なビットコインマイニングホスティングサービスは「クライアントがコンピュータと電気を購入するだけ」であり、資本のプールや利益分配、収益生成へのプロモーターへの依存がないため、ハウイーテストでは明らかに証券には該当しないと指摘。VBitのケースは業界標準から外れており、「この見解がホスティングマイニング業界に影響を与えることはない」と述べ、業界全体への波及効果を否定する見解を示しました。現在のトランプ政権下では、SECは業界に対してより支持的な姿勢を取ると見られており、バイデン政権下で開始されたいくつかの高プロファイルな暗号資産調査は打ち切られています。ただし、詐欺関連の訴訟は多くが進行中です。
まとめ
SECは、ビットコインマイニングホスティングサービスを証券法の対象と見なす可能性を示す見解を、VBitへの訴訟の中で示しました。これは、投資家が事業者の努力に依存して受動的利益を期待する構造が、証券と判断される一因となり得ることを意味します。しかし、業界標準に則った正当なホスティングサービスは性質が異なり、業界関係者は本件が業界全体に与える影響は限定的だと見ています。規制当局の見解と業界実務の間の解釈の違いが、今後の注目点となるでしょう。