概要
シグナム銀行(Sygnum)の「APAC HNWI Report 2025」によると、アジア太平洋地域の富裕層(HNWI)の87%がデジタル資産を保有し、その60%がさらなる配分増加を計画している。調査は同地域10市場の富裕層・プロ投資家270名以上を対象とした。デジタル資産は、同地域における長期の資産形成戦略の構造的要素となりつつある。
背景
アジア太平洋地域、特にシンガポールや香港では、金融当局による規制枠組みが整備され、機関投資家級の保護を求める富裕層投資家にとってデジタル資産投資の環境が整いつつある。従来の資産運用会社も、こうした需要に対応するサービス提供が迫られている。
マーケット動向
調査対象となった富裕層の49%がポートフォリオの10%以上を暗号資産に配分しており、中央値は10〜20%の範囲であった。また、80%の回答者がビットコインとイーサリアム以外の資産を含むETFを求めており、関心の高い資産はソラナ(52%)、マルチアセット暗号インデックス(48%)、XRP(41%)であった。さらに、ETF構造にステーキング利回りが組み込まれれば、70%が配分または増配を行う意向を示した。
影響と展望
報告書の著者であるルーカス・シュヴァイガー氏は、シンガポールを中心とするAPAC地域の富裕層が、デジタル資産を真の資産形成・保全の機会として受け入れていると指摘。その規律ある世代間投資アプローチと高いリスク選好が、デジタル資産への実質的な配分を推進している。共同創業者兼APAC CEOのジェラルド・ゴー氏は、APACが世界で最も急速に成長し影響力のあるデジタル資産ハブの一つとして急速に台頭しており、2026年に向けてこの勢いがさらに加速するとの見通しを示した。長期的な市場見通しについては、富裕層の57%、超富裕層(UHNWI)の61%が強気または非常に強気な見方を表明している。
まとめ
アジア太平洋地域の富裕層投資家の間でデジタル資産への本格的な採用が進んでおり、その主要な動機は短期投機から長期の資産保全と分散投資へとシフトしている。規制環境の整備が投資を後押しする一方、規制の不明確さやセキュリティ懸念といった障壁も残っており、市場参加の更なる拡大にはこれらの解消が鍵となる。