概要
ベテラン・トレーダーのピーター・ブラント氏は、ビットコイン(BTC)が現在のパラボラ(放物線)状の上昇トレンドを崩したと指摘し、過去の強気市場サイクルでは同様の兆候が80%以上の大幅な下落に先行していたと警告した。一方で、企業によるビットコインの戦略的保有の増加や現物ETFの導入など、市場の構造的な変化から、今回のサイクルは過去とは異なる可能性も示唆されている。
背景
ビットコインの価格は、歴史的に強気市場においてパラボラ状の上昇トレンドを形成し、そのトレンドラインが崩れた後に大幅な調整局面に入るパターンが見られてきた。ピーター・ブラント氏は、この技術的分析に基づき、現在のビットコイン価格が同様の兆候を示していると指摘している。
テクニカル詳細
ブラント氏の分析によれば、ビットコインの強気市場サイクルは時間とともに減衰する指数関数的なパラボラ状の上昇に従ってきた。過去の各サイクルでは、主要なパラボラが崩れると、価格は長期にわたる調整局面に入った。歴史的にこれらの下落はサイクル高値から80%未満でピークに達したが、いずれも深刻なものだった。現在、ビットコインはそのパラボラ構造がすでに崩れており、史上高値から約20%下落している。これは直ちに暴落を意味するものではないが、過去のパターンに従えば、下落時のボラティリティが拡大する局面に入った可能性を示している。
マーケット動向
技術的な警告が発せられる中、マクロ経済的な流動性リスクも高まっている。Polymarketの予測では、日本銀行(BOJ)が12月19日に0.25%の利上げを行う確率が97%と見積もられている。過去、日銀の金融引き締めは世界的なリスク資産にとって逆風となってきた。日本の利上げにより円キャリートレードが巻き戻され、世界的な資金調達環境が引き締まり、レバレッジポジションの圧縮が迫られるためである。暗号資産コメンテーターのクインテン氏によれば、ビットコインは過去3回の日銀利上げ(2024年3月:約-27%、2024年7月:約-30%、2025年1月:約-30%)の際にいずれも下落しており、同様の反応が懸念される。
影響と展望
過去との類似点がある一方で、2022年以降、ビットコインへの需要構造は進化している。Glassnodeのデータは、企業のビットコイン財務資産(トレジャリー)が2023年1月の約19万7,000BTCから現在の108万BTC以上へと448%増加したことを示している。これは、ビットコインが純粋な投機対象から戦略的なバランスシート資産へと進化していることを反映している。さらに、長期保有者の供給は高水準を維持し、現物ETF商品はより安定した制度的な資金流入をもたらしている。これらの構造的変化は、将来の下落が過去の市場サイクルよりも小幅で、市場による吸収が主導する可能性を示唆している。しかし、技術的な警告とマクロ経済的圧力が重なることで、短期的な下落リスクは依然として存在する。
まとめ
ベテラン・トレーダーのピーター・ブラント氏は、ビットコインのパラボラ状トレンドの崩壊が過去の大幅調整と類似していると警告した。歴史的なパターンに従えば、80%の下落も可能性の範囲内となる。一方で、企業による戦略的保有の急増や制度的な資金流入の定着など、市場基盤の強化は過去のサイクルとの明確な違いであり、調整の深さや性質に影響を与える可能性がある。今後の動向は、技術的なシグナルと、日銀の金融政策に代表されるマクロ環境、そして強化された市場構造の相互作用によって決まると言える。