ビットコイン(BTC)価格:円キャリートレード巻き戻し懸念は的外れ、真のリスクは別にある

日本銀行(BOJ)の利上げが迫る中、一部で懸念される「円キャリートレード」の巻き戻しによるビットコイン(BTC)などリスク資産への悪影響は、現実的なリスクではないとの分析を伝える。その理由として、第一に、BOJの利上げ後も政策金利は0.75%と米国(3.75%)との金利差は依然大きく、キャリートレードの大規模な巻き戻しを促すほどの円高圧力にはならない。第二に、利上げは織り込み済みであり、10年物日本国債(JGB)利回りは約1.95%と数十年ぶりの高水準に達している。第三に、為替市場では投機筋の円のネットポジションは2月以降一貫して買い越し(強気)であり、利上げ後のパニック買いの余地が小さい。真のリスクは、日本の金融引き締めが米国債利回りの高止まりを支え、世界的なリスク選好を冷やし、暗号資産や株式の評価を圧迫することにあると指摘している。

概要

日本銀行(BOJ)の利上げが迫る中、一部の観測筋は、円高による「円キャリートレード」の巻き戻しがビットコイン(BTC)を含むリスク資産を圧迫すると懸念している。しかし、為替と債券市場の実際のポジションを考慮すると、この懸念は的外れであり、真のリスクは日本の利上げが世界的な債券利回りを高止まりさせ、リスク選好を冷やすことにあると分析されている。

背景

「円キャリートレード」とは、投資家が日本の低金利で円を借り入れ、米国債や米国ハイテク株などの高利回り資産に投資する取引。日本は長年ゼロ金利政策を維持し、円は主要な安価な資金調達通貨として機能してきた。BOJの利上げにより円の安価な資金調達通貨としての地位が揺らげば、この取引の魅力が薄れ、資金の逆流(巻き戻し)が起き、世界的なリスク回避を招く可能性が指摘されていた。

市場分析

懸念されている円キャリートレードの巻き戻しシナリオは、以下の理由で現実的ではないとされる。

第一に、BOJ利上げ後も政策金利は0.75%と予想され、米国の3.75%との金利差は依然として大きく、米国資産への投資を促す構造は変わらない。

第二に、利上げは市場でほぼ織り込み済みである。指標となる10年物日本国債(JGB)利回りは1.95%と数十年ぶりの高水準に達しており、これは利上げ後の政策金利(0.75%予想)を100ベーシスポイント以上上回っている。InvestingLiveのチーフアジア太平洋通貨アナリスト、エイモン・シェリダン氏は、「日本の1.7%のJGB利回りは驚きではない。それは1年以上前から先物市場に織り込まれており、投資家は2023年以降、BOJの正常化に向けて既にポジション調整を済ませている」と述べている。

第三に、為替市場のポジショニングが異なる。Investing.comのデータによれば、投機筋の円のネットポジションは今年2月以降一貫して買い越し(強気)状態が続いている。これは、2024年7月のBOJ利上げ時に投機筋が円を売り越し(弱気)状態でパニック買いを誘発した状況とは対照的であり、今回の利上げ後、円が急騰する余地は小さい。

投資家の視点

真のリスクは、円の急騰によるキャリートレード巻き戻しではなく、日本の金融引き締めが米国債利回りの高止まりを持続させ、予想される米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ効果を相殺することにある。これは、借入コストを上昇させ、暗号資産や株式を含む資産評価を圧迫し、世界的なリスク選好を冷やす可能性がある。

また、ドナルド・トランプ大統領による財政拡大策の推進が債務懸念を煽り、債券利回りを押し上げ、リスク回避を引き起こすというマクロリスクも存在する。

まとめ

予想されるBOJの利上げはボラティリティをもたらす可能性があるが、2025年8月のような大規模な円キャリートレード巻き戻しを引き起こす可能性は低い。投資家は既に引き締めを見込んだポジション調整を進めており、調整は段階的かつ部分的に既に進行中である。投資家が注視すべきは、円の動向そのものよりも、日本の金融政策が世界的な債券利回りとリスクセンチメントに与える広範な影響である。

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