概要
ブルームバーグのETF専門家エリック・バルチューナス氏は、ビットコイン(BTC)を17世紀のオランダで起きた投機バブル「チューリップ・マニア」に例える議論は、ビットコインが17年間にわたり示してきた存続と回復力(レジリエンス)により、もはや時代遅れであると主張した。同氏は、ビットコインが過去3年で約250%、昨年単体で122%上昇している事実を挙げ、単なる投機対象ではないことを示唆している。
背景
ビットコインにはその価値を疑問視する批判が根強く存在する。今月初めには「ザ・ビッグ・ショート」で知られる投資家マイケル・ベリー氏がビットコインを「現代のチューリップ球根」と呼び、2017年にはJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOが「チューリップ球根より悪い」「詐欺」と発言するなど、伝統的金融界の重鎮から否定的な見解が示されてきた。チューリップ・マニアは、歴史上最初に記録された投機バブルの一つとして、価格が急騰後暴落する「ポンプ・アンド・ダンプ」のチャートパターンの代名詞ともなっている。
市場分析
バルチューナス氏は市場分析において、チューリップ市場が約3年という短期間で急騰し崩壊した「一発でノックアウト」されたものだと指摘する一方で、ビットコインは「6、7回の強打から戻り、史上最高値を更新し、17年間生き延びてきた」と対比した。また、ビットコインが今年行っているのは「昨年の極端な上昇分を戻しているだけ」であり、仮に2025年が横ばいまたは小幅下落で終わったとしても、ビットコインは年間平均の約50%の水準で推移していると述べ、資産には時々冷やす期間があってもよいとし、人々が「過剰分析している」との見解を示した。
業界への影響
この議論は、暗号資産(仮想通貨)業界が従来から直面してきた「投機的バブル」とのレッテル貼りに対する反論として意義を持つ。ビットコインが単なる一過性の流行ではなく、ある程度の成熟した資産クラスとして認識されつつあることを専門家が指摘した形だ。業界関係者からも、ドイツのビットコイン資産管理会社Aifinyoの戦略責任者ギャリー・クルーグ氏が「バブルは、複数の市場サイクル、規制戦い、地政学的ストレス、半減期、取引所の破綻を生き延び、それでも新たな高値に戻ることはない」と同調するコメントを寄せており、業界内で一定の支持を得ている見解と言える。
投資家の視点
投資家の視点として、バルチューナス氏はビットコインが「非生産的資産」であるという批判にも言及。金、ピカソの絵画、希少切手も同様に非生産的であるが、それらをチューリップと比較するかと問いかけ、「全ての資産が価値を持つために生産的である必要はない」と指摘した。これは、キャピタルゲイン(値上がり益)以外のインカムゲイン(配当や利息などの収益)を生まない資産に対する投資判断の一つの考え方を示している。一方で、一部の人々はこの資産を嫌悪し、それを好む人々を怒らせたいだけであり、それはおそらく変わらないだろうという市場心理についても言及した。
まとめ
ETF専門家エリック・バルチューナス氏は、ビットコインをチューリップ・マニアのような歴史的バブルと同一視する見方に明確な異議を唱えた。その根拠として、約3年で終わったチューリップ・バブルとは異なり、ビットコインが17年という長期にわたり、幾度もの試練を乗り越え、大幅な価格上昇も実現してきた実績を挙げている。非生産的資産である点を批判する声に対しても、価値の源泉は多様であると反論。ビットコインに対する市場の見方は依然として分かれるが、その比較的長い歴史と回復力は、単純なバブル論を超えた議論を必要とする段階にあることを示唆している。