ロシアの金融大手VTB、国内初のスポット暗号資産取引提供へ 規制緩和受け

ロシア第2位の資産規模を誇る金融機関VTB銀行は、2026年に国内の金融機関として初めて、適格投資家向けにビットコインやイーサリアムなどの主要暗号資産のスポット取引サービスを開始する計画を明らかにした。同社ブローカレッジサービス責任者のアンドレイ・ヤツコフ氏がロシアメディアRBUのインタビューで発表した。取引資格は投資ポートフォリオが130万ドル以上、または年間所得65万ドル以上の投資家に限定される。この動きは、ロシアが2022年以降、西側諸国の制裁回避手段として暗号資産への関心を高めてきた背景にある。中央銀行も10月、銀行による暗号資産業への参入を初めて許可する方針を示していた。VTBは時価総額約2500億ドル、総資産4100億ドル超の金融大手であり、その参入は市場にとって重要な意味を持つ。ただし同社は、一般市民への広範な普及は見込んでいないとしている。

概要

ロシア第2位の資産規模を有するVTB銀行は、2026年に国内の金融機関として初めて、適格投資家を対象としたビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの主要暗号資産のスポット取引サービスを開始する計画である。取引資格は投資ポートフォリオ130万ドル以上、または年間所得65万ドル以上の投資家に限定される。

背景

ロシアは、2023年及び2024年に中国とインド向けに行った年間1920億ドル規模の石油取引に対する西側諸国の制裁を回避する手段として、イランやベネズエラと同様に暗号資産の利用を増やしてきた。石油・ガスはロシア連邦歳入の30%を占める。かつては暗号資産を全面禁止するなど強く反対していたが、2022年に米国と欧州連合(EU)が新たな制裁を課し始めてからは、仮想通貨に接近する姿勢へと転換した。

企業動向

VTB銀行のブローカレッジサービス責任者、アンドレイ・ヤツコフ氏はロシアメディアRBUのインタビューで、「『超適格』投資家によるテストの準備は既に進行中だが、この資格が広く普及することはないだろう」と述べた。同氏は、一般市民における暗号資産への需要が高まるという見方については、「いいえ、我々はそのようには予想していない」と否定した。VTB銀行は、顧客の暗号資産への関心が高く、これは世界的な傾向を反映していると説明し、「したがって、この立場に基づき、我々もこのプロセスに参加する」と述べている。

市場分析

VTB銀行は時価総額が約2500億ドル、総資産は4100億ドルを超えるロシア有数の金融機関である。タス通信の10月の報道によれば、イワン・チェベスコフ財務次官は、約2000万人のロシア人が「様々な目的で」暗号資産を使用していると述べており、これは政府が抵抗するのではなく対処すべき現実であると説明した。ロシアの人口は約1億4600万人である。

業界への影響

VTB銀行は、顧客に暗号資産取引を提供する世界の少数の金融機関の一員となる。スタンダードチャータード銀行は7月に機関投資家向けにビットコインとイーサリアムのスポット取引を提供した最初のグローバル銀行となった。スペインの競合行であるBBVAとサンタンデール銀行も今年、スポット暗号資産取引の提供を開始している。リヒテンシュタインに本拠を置くバンク・フリックは、早くも2018年に顧客に複数の暗号資産へのアクセスを提供し始めた。シンガポールのDBS銀行も同サービスを提供していると報じられている。

投資家の視点

暗号資産の利用増加に対応して、ロシア中央銀行のヴラジーミル・チスチューヒン第一副総裁は10月、規制当局が初めて銀行による暗号資産部門での事業を許可することを決定したと述べた。これにより、VTBのような大手銀行の参入が可能となる規制環境が整った。一方、VTB銀行自身は、サービス対象を高額資産家に限定しており、一般層への広がりやそれに伴うリスクについては懐疑的な見方を示している。

まとめ

西側制裁下にあるロシアにおいて、国を代表する金融機関の一つであるVTB銀行が、国内で初めて適格投資家向けの暗号資産スポット取引サービスを開始する計画を明らかにした。これは、同国が制裁回避の現実的手段として暗号資産を容認・活用する方向に政策を転換し、中央銀行が銀行の参入を許可したことを受けた動きである。ただし、同サービスは富裕層投資家に限定され、一般市民への普及は限定的と見られている。

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