ビットコイン、実現損失58億ドル近くに達するも、大型保有者の積極的買い増しが加速

仮想通貨ビットコイン(BTC)の市場において、価格下落局面にもかかわらず、大型保有者(ホエール)や中規模保有者による積極的な買い増し(アキュムレーション)の動きが強まっている。データ分析企業Glassnodeの情報によると、ビットコインの「アキュムレーション・トレンド・スコア」が1に近づき、大規模投資家による集中的な買いが行われていることを示唆。特に、100BTC以上の保有者(ホエールやシャーク)は、新規に採掘されるビットコイン供給量の約240%を吸収するペースで買い増しており、これは史上最速の水準とされる。一方、11月21日にビットコイン価格が8万ドルまで下落した際には、すべての保有者による実現損失の合計が約58億ドル(約5.8Bドル)に達し、2022年のFTX崩壊以降で最大の損失計上となった。この損失の大部分は短期保有者によるもので、長期保有者の損失は比較的抑制されていた。これらのデータは、価格下落を機にした大型投資家の積極的な買いと、一部投資家の損失確定(キャピチュレーション)が同時に発生している状況を示しており、市場の勢い(モメンタム)が転換する可能性を示唆する重要な兆候と市場関係者は分析している。

概要

ビットコイン(BTC)の価格が過去30日間で10%下落する中、複数のウォレット保有者グループが売却(ディストリビューション)から買い増し(アキュムレーション)へと姿勢を転換している。データは、この買い増し傾向と、約58億ドル(約5.8Bドル)に迫る記録的な実現損失が組み合わさることで、市場の勢い(モメンタム)に潜在的な転換点が訪れている可能性を示唆している。

背景

ビットコイン価格は、2025年11月21日に8万ドルまで下落した。この価格下落を受けて、市場では様々な規模の保有者による動向に変化が生じている。

市場分析

データ分析企業Glassnodeの情報によると、ビットコインの「アキュムレーション・トレンド・スコア(ATS)」が1に近づいており、大規模投資家による集中的な買い増しが行われていることを示している。ATSが1(濃い青色)に近いほど、大型保有者(ホエール)がビットコインを売却するよりも買い増していることを意味し、0(薄い黄色)に近いほど、売却または買い増しを行っていないことを意味する。このトレンドスコアの急上昇は、ほぼすべての保有者層で売却から買い増しへの移行が起きていることを示している。この変化は、6月に10万ドルを下回った水準から、8月14日に過去最高値の124,500ドルまで上昇した際の7月に観察された買い増しパターンと類似している。

さらにGlassnodeの追加データは、10BTCから1,000BTCを保有する中小規模のエンティティによる買いが再燃し、過去数週間にわたって積極的に買い増しを行っていることを明らかにしている。この買い増し傾向を補強するのが年間吸収率の指標であり、ホエールやシャーク(中大型保有者)が現在、ビットコインの年間新規発行量の約240%を吸収している一方で、取引所は史上最速のペースでコインを失っていることが示されている。特に、100BTC以上の大型保有者は新規発行量の約1.5倍を買い集めており、これはビットコインの歴史においてホエールとシャークによる最速の買い増しペースとされている。

一方、11月22日時点で、ビットコインの実現損失は約58億ドル(約5.8Bドル)近くに達した。短期保有者(STH)による実現損失は30億ドル、長期保有者(LTH)による損失は17.8億ドルに達した。11月21日にビットコインが8万ドルまで下落した後、すべての保有者による実現損失の合計は57.8億ドルに達した。Glassnodeは、「損失の大部分は短期保有者によるものであり、長期保有者の損失は比較的抑制されている。これは、ストレスが主に最近の買い手にかかっていることを示している」と分析している。

業界への影響

ビットコインの買い増し傾向は、ビットコイン財務省(トレジャリー)企業の登場や新たなETF需要を背景に、伝統的金融(トラディショナル・ファイナンス)がビットコインを採用し始める中での構造的変化を示している。また、取引所からの資金流出が続き、取引所の年間吸収率が-130%を下回っていることは、自己保管(セルフカストディ)や長期投資への選好が高まっているシグナルと解釈されている。

投資家の視点

現在の下落局面において、短期ビットコイントレーダーは未実現損失の点で最も圧力に直面しており、最近の売り圧力の最大3%をETFが占めていると報告されている。記録的な実現損失は、古典的な「キャピチュレーション」(投げ売り)の兆候と見なされることが多く、過去の同様の局面ではその後の強気(ブル)相場への転換点となったこともある。ただし、本記事は投資助言や推奨を含むものではない。

まとめ

ビットコイン市場では、価格が8万ドルまで下落したことを機に、大型・中規模保有者による積極的な買い増しが加速している。同時に、約58億ドルに及ぶ大規模な実現損失が計上され、特に短期保有者にストレスが集中している。これらの相反するデータは、市場参加者の行動に大きな分岐が生じており、市場の底入れや勢いの転換を示唆する可能性のある重要な状況を映し出している。

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