概要
フランスを代表する銀行グループの一つであるGroupe BPCE(総資産約1.3兆ドル)が、顧客向けの暗号資産取引サービスを開始する。2025年12月9日(月)より、第一段階としてグループ内の4つの地域実体を通じて約200万人の顧客に対し、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ソラナ(SOL)、ステーブルコインのUSDCの購入・売却サービスを提供開始する。サービス利用には月額2.99ユーロの費用と、取引額の1.5%(最低1ユーロ)の手数料がかかる。2026年までにサービスをグループ全体の1200万人以上の顧客へ段階的に拡大する計画である。
背景
欧州では、Revolut、DeblockApp、Bitstack、Trade Republicなどのフィンテック企業や専業アプリが小売顧客向けに暗号資産アクセスを拡大しており、大きなユーザーベースを獲得している。これに対し、伝統的な銀行は自社プラットフォーム内での顧客関係を保護し、顧客流出を防ぎ、新規顧客を獲得するため、デジタル資産サービスへの参入を加速させている。
企業動向
BPCEグループは、Caisse d'ÉpargneとBanque Populaireの各アプリ内に構築された専用のデジタル資産口座を通じて取引サービスを提供する。今回のローンチは、グループのデジタル資産構造に関連する規制上のマイルストーンを経て実現した。デジタル資産サービス提供の認可を取得した子会社のHexarqが、BPCEの取り組みの指揮を執ることになる。同グループは、長年にわたり暗号資産分野での公的な活動が比較的少なかったが、この子会社を通じて消費者向け製品を拡大する態勢が整ったとみなされている。
市場分析
今回のサービス対象となる最初の地域実体には、Banque Populaire Île-de-France(イル・ド・フランス)とCaisse d'Épargne Provence-Alpes-Côte d'Azur(プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール)などが含まれる。段階的なアプローチにより、BPCEはサービス開始時の利用状況と運営への影響を追跡することを目的としている。価格モデルは、定期的な費用と取引ごとの手数料を単一の小売向けオファーに統合している。
業界への影響
欧州の銀行は、企業や富裕層向けサービスを優先するグループもあれば、顧客の離脱を抑え新規ユーザーを獲得するために小売商品に焦点を当てるグループもある。この分野で活動する銀行関係者は、顧客維持と新規獲得の両方が主要な推進力であると述べている。スペインの銀行は小売向け暗号資産アクセスで先行しており、BBVAは自社アプリを通じてスペインの顧客がビットコインとイーサリアムを購入、売却、保有できるようにし、自社内での保管と24時間365日の取引を提供している。サンタンデール銀行も、欧州の小売顧客向けにビットコイン、イーサリアム、ライトコイン、ポリゴン、カルダノへのアクセスを開放しており、これらのサービスは同銀行が最近立ち上げたデジタル部門のOpenbankによって提供され、保管サービスと透明性の高い取引手数料を提供している。
投資家の視点
銀行が直接暗号資産取引サービスを提供することは、伝統的金融機関によるデジタル資産の主流化への大きな一歩とみなされる。これは、規制環境が整い、機関投資家や一般投資家の需要が高まっていることを示唆している。一方で、サービス提供に伴う運営リスク、市場のボラティリティへの対応、競合他社との差別化が今後の課題となる可能性がある。
まとめ
資産規模1.3兆ドルを誇るフランスのGroupe BPCEが、顧客向け暗号資産取引サービスに参入する。まずは約200万人の顧客を対象にBTC、ETH、SOL、USDCの取引を開始し、2026年までに全顧客への拡大を目指す。フィンテックの台頭に対抗し顧客基盤を守るため、欧州の伝統的銀行が相次いで暗号資産サービスを導入する流れが強まっている。