Citadel証券、SECにオープンソース開発者のブローカー登録義務化を要請 - Uniswapが反論

米国大手マーケットメイカーのCitadel証券が12月2日、米証券取引委員会(SEC)に提出した書簡で、トークン化された米国株式の取引を可能にする分散型プロトコル(DeFi)は、既存の証券取引所や証券ブローカーの法的定義に該当すると主張した。同社は、投資家保護の観点から、こうしたプロトコルの運営者やオープンソース開発者にも取引所やブローカー・ディーラーとしての登録義務を適用すべきだと訴えている。これに対し、分散型取引所Uniswapの創設者ヘイデン・アダムス氏は、Citadelの主張は「分散型プロトコルのソフトウェア開発者を中央集権的な仲介業者のように扱おうとする試み」だと反論。12月4日に開催されたSEC投資家諮問委員会のパネルでは、トークン化株式を既存の市場構造にどう統合するかが議論され、規制の在り方を巡る伝統的金融(TradFi)と分散型金融(DeFi)の対立が先鋭化している。この議論は、証券の本質が台帳技術に依存しないというCitadelの「インフラとしてのコード」理論と、オープンソースコードは仲介業者とは区別されるというアダムス氏らの「自律的コード」理論の衝突としても捉えられ、2026年に向けた重要な規制の行方を左右するものとなっている。

概要

米国大手マーケットメイカー、Citadel証券は2025年12月2日、米証券取引委員会(SEC)に対し、トークン化された米国株式の取引を可能にする分散型金融(DeFi)プロトコルは、既存法規における「取引所」や「証券ブローカー・ディーラー」の定義に該当すると主張する13ページの書簡を提出した。同社は、投資家保護と市場の公平性・効率性を維持するため、広範な規制免除を認めるべきではなく、プロトコル開発者を含む関係者に登録義務を課すべきだと訴えた。これに対し、分散型取引所Uniswap創設者のヘイデン・アダムス氏は、この主張はソフトウェア開発者を仲介業者とみなす誤った試みだと即座に反論した。

背景

トークン化株式(伝統的な株式の所有権をブロックチェーン上のトークンで表現したもの)の実現可能性が高まる中、その取引をどのような規制枠組みで監督するかが喫緊の課題となっている。SEC投資家諮問委員会は12月4日、この問題を主要議題としてパネルディスカッションを開催し、市場関係者から意見を聴取した。議論は、株式をブロックチェーン上に移行させることの是非から、その実現方法、特に許可不要(パーミッションレス)なDeFiのアーキテクチャを維持できるかどうかに焦点が移っている。

企業動向

Citadel証券は書簡で、トークン化そのものには原則として賛同しつつも、その恩恵を実現するためには「米国株式市場の公平性、効率性、強靭性を支える基本的原則と投資家保護」を適用する必要があると主張。具体的には、トークン化されたApple株などを取引しようとする企業は、透明な手数料、統合テープ報告、市場監視、公平なアクセスなどのナスダックのルールを遵守し、取引所またはブローカー・ディーラーとして登録すべきだと述べた。

市場分析

Citadelは、DeFiプラットフォームに広範な規制免除を与えることは、流動性が分散し、個人投資家が証券取引所法の保護を失い、既存業者が未登録の競合他社からの規制仲裁に直面する「影の米国株式市場」を生み出すと警告している。この問題は、Howeyテスト論争以来の暗号資産業界における最も重要な規制論争の一つと位置付けられている。

業界への影響

この議論は、伝統的金融(TradFi)と分散型金融(DeFi)の根本的な対立を浮き彫りにしている。世界取引所連合(WFE)はSECに対し、暗号資産企業が従来の規制の枠組みなしにトークン化株式を販売することを可能にする広範な救済措置に反対する声明を出した。一方、証券業金融市場協会(SIFMA)は技術中立の立場を支持しつつも、トークン化証券は中核的な投資家保護および市場健全性ルールの対象であり続けるべきだと主張した。ナスダックは以前、適格なトークン化株式を、同じCUSIP番号と実質的な権利を持つ伝統的株式と同一の注文帳で互換性があるものとして扱う提案を行っており、規制緩和的な方向性を示唆している。

投資家の視点

Citadelの主張が通れば、トークン化株式の取引を可能にするスマートコントラクトを展開するオープンソースのプロトコル開発者でさえ、純資産規制、保管要件、本人確認義務を伴うブローカー・ディーラーとしての登録が必要となる可能性がある。これはオープンソースのプロトコル開発を法的に実行不可能にするリスクがある。逆に、規制が緩すぎれば、投資家保護が不十分な「影の市場」が成長し、個人投資家がリスクに曝される可能性がある。SECのヘスター・ピアース委員は、通常のDeFiフロントエンド構築者やオープンソース開発者が、単にコードを公開したり非保管型のUIを運営したりしただけで、自動的に取引所やブローカーの基準を適用されるべきではないとの見解を示している。

まとめ

Citadel証券によるSECへの書簡提出と、それに対するUniswap創設者らの反論は、トークン化株式という新たな資産クラスの台頭を背景に、伝統的金融と分散型金融の規制哲学が激突していることを示している。Citadelは「証券は証券である」という立場から、技術形態に関わらず投資家保護のための仲介者責任を重視する「インフラとしてのコード」理論を展開する。一方、DeFi側は、自律的なオープンソースコードそれ自体は仲介業者とは異なり、透明性と許可不要性こそが保護をもたらすとする「自律的コード」理論を主張する。2026年は、SECがこれらの競合する理論の間で、トークン化株式が既存の規制枠組み内でどのように存在し得るかを試す年となることが示唆されている。

一覧に戻る